「あぁ、来たなぁ」
と、懐かしくて、ワクワクする気持ち。
目の前には広い広い畑が広がり、野菜や果実が実るビニールハウスが家と並んで建っています。
家の中に入る時ちょっと緊張するのは、なんとなく薄暗く、重い空気が漂っているせい。
ちょっぴりカビの古臭いにおいがする、私のおばあちゃんの家です。
祖母の家で、大人の長い長い退屈な会話から抜け出して遊びまわるには、おばあちゃんの家は十分な広さでした。
長い回廊や見たことの無いものたち−土間やかまどや厠など−があって、まるで異次元空間みたい。 なんとなく陰気なイメージだったその家が、大人になった今尋ねてみると、とっても居心地が良いのです。
踏みならして所々ピカピカに光る土間は、かまどが撤去されて増築した部屋の下敷きになってしまいましたが、長い時間をかけて飴色になった廊下や柱、扉や天井。廊下を挟んで障子越しに差し込んでくる光はとってもやわらか。
建物のひとつひとつが「きれい」だと感じます。
先日大阪へ行った時の事。
珈琲好きの私はここで是非コーヒーを飲もう!とチェックしていたお店がありました。
比較的空いている時間を狙って行ったのですが、扉を開けると、中は満席ですごい人!諦めて泣く泣く帰りました。
土間・古いインテリア・おいしい珈琲・・味わいたかったなぁ。 薄暗い落ち着いた店内は、何時間でもリラックスしていられそうな雰囲気でした。 私のおばあちゃん家みたいに。
住宅では、ここ数年ナチュラル系の北欧流行り。反面、最近よく見かけるカフェや個人のお店には、古民家を再生したようなインテリアイメージのお店がとても多いように感じます。光溢れる北欧系と、薄暗い和のアンティーク系は、まるで対照的。
家では、家族のみんなに活発&元気で欲しいから、自然と明るい部屋を好むのだと思います。でも、外で疲れて「ほっ」としたくなった時に行きたくなるのは、明るすぎず、静かで落ち着いた空間なのでしょうね。
昼間は活動的でいたい「わが家」でも、夜には落ち着いた雰囲気の中で過ごしたい人も多いはず。 ちょっぴり照明を落として、夜限定の「カフェムード」を演出するのも良いかもしれません。
子どもが大きくなってきた我が家では、最近ソファカバーを新調しました。
ナチュラルな明るい生成り色から、落ち着いたベージュへ。 今は亡き祖母が作ってくれた鞠を飾り、家具はダークオークに塗り替えました。
そんな雰囲気のせいか、困った事に夫もお酒がどんどん進みます。
そういえば、毎晩飲み歩いていたダンナさまに困った奥さまが、リビングをシックな雰囲気にリフォームし、ホームバーを設置したところ、ダンナさまは毎晩家で晩酌をするようになったとか。
子育ての時期が過ぎたら、意識して大人のインテリアに変えていくと、家族の関係もより良くなるのではないかな、と思います。
おばあちゃん家のような落ち着いた空間に「ほっ」とできるのは、子どもの頃の記憶が「懐かしい」と感じるからなのかもしれませんね。
しかし、今の子ども達。里山の民家のようなおばあちゃん家を持つ子がどれだけいるんだろう。大人になった時、彼らが感じる「懐かしい風景」が、どうか、寂れた新興住宅地でありませんように・・・
エンドウリョウコ
イラストレーター。鋸やカンナを携えて、家具のデザイン・制作に夢中だった短大時代。 その後ショールームで家具販売やマンション販売に従事した、根っからのインテリアフリークです。現在はイラスト制作をしながら、生活人として「暮らしを楽しむヒント」を日々模索中。インテリアコーディネーター有資格者。